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和田秀樹先生の意見

4月1日産経新聞の「正論」に掲載された、和田秀樹先生の意見です。
これもなるほど・・・です。


新型コロナウイルスへの世界的パニックは、いつ終わりが迎えられるのかが読めない状況だ。実際、シンガポールやタイなどでも感染が起こっているのだから、インフルエンザのように夏になれば収束することも期待しづらい。

〈長期戦と集団免疫の発想 〉
 もちろん、特効薬やワクチンなどが開発されれば今の不安感はかなり緩和されるだろうが、数カ月の単位で期待するのはかなり困難だろう。
現時点で、感染拡大を防ぐという封じ込め型の対策が原則となっている。 ただ、このウイルスが、MERS(致死率35%)やSARS(致死率10%)ほど強毒性のものではないから、別の対策が考えられないことはない。 最近、集団免疫ということばをよく耳にするようになった。
感染して無事に治癒した人が増えてくると、その人たちは感染しないので、それが盾になって感染が広がらないという考え方だ。
 英国は、その考えであまり派手な規制を行わなかったが、感染が広まったために撤回したとされる。3月20日にはほかの欧州諸国に倣い英国全土の学校を休校にすることをジョンソン首相は発表した。死者が100人を超えたことが大きいようだ。
 私は、実は日本こそ、集団免疫的な発想が役立つと信じている。
 インフルエンザやコロナのような上気道のウイルス感染症は脳炎などにならず、死なないですめば、元の状態に戻ることができるし、免疫も獲得する。
 感染拡大を防ぐことも、もちろん大切だが、よしんばそれに感染しても、重症化せず、究極的には死に至らず、回復すれば元の生活に戻れるという考え方も重要なのではないだろうか。
 日本の場合、原則的にそれを疑わせる明確な症状がある人しか検査を行っていないので、3月30日には感染者数が約2000人になったとされているが、実数ははるかに多いだろう。
 また、検査の普及で見つかる感染者も多いだろうし、検査を受けていない感染者からの感染で、その数は増えていくはずだ。
 つまり、感染拡大に主眼を置いていたら、いつ収束を迎えるかは予想がつかない。

(高齢者医療の視点からも)
 しかし、感染拡大過程で集団免疫が生じることと、死者を増やさなければいいという発想に転じることができれば、多少は収束が見えてくるのではないだろうか。
 30日現在、日本の死者数は59人で年齢が公表されているケースはがん患者を除き、高齢者である。検査数を考えると感染者の実数はずっと多いだろうが、死者数の誤差はほぼないはずだ。 だとすると、これはかなり少ない数といえる。
実は、米国ではインフルエンザで今シーズンだけで1万2千人死んでいる。医者にかからないで死亡する(医療費の高さのため)人が多いので、3万人という推定もある。2017~18年のシーズンには6万人以上の死者を出したそうだ。
 また、日本でも毎年10万人以上が肺炎で亡くなっている。その9割以上が高齢者である。
 高齢者医療を30年以上やってきた私の見るところ、少なくともその3分の1くらいが、通常の風邪やインフルエンザをこじらせたものである。3万人以上の人が毎年、旧来型のコロナウイルスやインフルエンザウイルスで亡くなっているのである。
 海外の劣悪な医療水準では一定数の死者が出るかもしれないが、国民皆保険のおかげで通常の風邪でも医者にかかれる日本では、新型コロナウイルスが経済活動などを犠牲にしてまで感染拡大を防ぐことを最重視しなければならないほど怖いものとは思えない。過度な行動制限を行わないほうが集団免疫も期待できる。

( 安心感の発信重要なとき 〉
 その点で、安倍晋三首相の休校要請の継続解除の方向性は支持するし、過度なイベント自粛の継続は賛同できない。
 外出制限の弊害も小さくない。これは経済的なことだけでない。日光を浴びないことで神経伝達物質が減少し、うつ病のリスクは増す。免疫機能にも悪影響を及ぼすだろう。休校要請が継続されなかったからよかったもののこれが長期に続くと子供の学力や体力への悪影響は大きい。給食の牛乳提供をやめることで牛乳の売り上げが激減したということは家で飲ませないからだろうが、栄養状態にも悪影響が出ることだろう。
 専門家会議のメンバーを見る限り、免疫学者や精神科医、心理学者などは入っていない。
 行動制限の必要性をもっと多面的に検討してはどうだろうか。オリンピックの開催は延期になったが、この機会に日本の医療のレベルの高さを世界に宣伝すべきだ。
 感染予防は大切だが、感染の可能性はあっても、日本では、ほとんどがきちんと治ることや、訪日者も健康になって戻れるという内外への安心感の発信のほうが情勢の変化につながると信じている。(わだ ひでき)

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