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安らかに・・・

加藤治子さんが亡くなった。
NHKでさえ、「さよなら昭和のやさしいお母さん」みたいな言い方をしていたけれど、その例えは、あまりにもイメージが違うと思う。
加藤治子さんこそ、魔性の女優の代表だった。
最晩年でさえ、その残り香はあった。
まだ脚本家になったばかりの頃、久世光彦さんが、加藤治子さんを評して、「あんなしたたかで恐ろしい女はいないよ。でも童女のようにも見える。だから男はみんなやられるんだ。日本を代表するいい女優でもある」と言っておられた。
加藤道夫(劇作家)も奔放過ぎる妻・加藤治子に殺されたようなものだ。玄関から入って来た妻に向かうような姿勢で、箪笥の柄にひもをかけ、前に身を乗り出して縊死した。加藤道夫も激しい男だ。と言う話も、久世さんに聞いた話だ。
「昭和のやさしいお母さん」なんかじゃない。だからカッコよかったのだ。
名女優のご冥福を祈りながら、そんなことを考えた。

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