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脚本家の地位

もう大分前の話になってしまうが・・・ずっと頭に来ていたことがある。
アカデミー賞の外国映画賞を『おくりびと』が受賞した折のことだ。
当日、レッドカーペットの上を歩いたのは、監督、主演男優、主演女優、助演女優、プロデューサー、それにもうひとり、TBSの映画担当役員だった。
なぜそこに、脚本家がいないのか!
ニュースでも何度も流されたが、脚本家の小山薫堂氏は、別会場で中継画面を見ていたのである。
同じ脚本家として、私は愕然とした。
後から、小山薫堂氏をさしおいて、レッドカーペットを歩いたのが、TBSの映画担当役員だったと聞いて、これまた言葉を失った。
脚本家の地位とは、そんなものなのか。
脚本は脚(あし)の本、台本は台の本と書く。脚(あし)がしっかりしていないと、上半身はグラグラだし、土台がしっかりしていないと、立派な家は立たない。つまり優れた脚本がなくては、優れた作品は生まれないのである。
30点の脚本は、監督や役者がどんなにがんばって倍の成績にしても60点。でも80点の脚本なら、みんなで頑張れば100点はもとより、倍にすれば160点の作品となる。それほど元になる台本の出来は、作品に出来を左右する重要なものなのだ。
そんなこともわからない映画担当役員ではあるまいに、脚本家を差し置いて、自分が前に出るとは、とんでもない勘違いである。
小山さんは、文句も言えないだろうから、私が代わりに言いたい!
脚本家の仕事をナメないでもらいたい!
そんなことやってるから、昨今のTBSはダメなんだ。
同業者に友達はあまりいないが、脚本家の誰に聞いても、あれはヒドイと言っていたし、ショックを受けていた。
映画担当役員にゴマをすりたかった人間が誰なのかわからないが、現場に、脚本家もレッドカーペットの上を歩くべきだという人がいなかったことも衝撃だ。
プロデューサーはなにをやっていたのか? 
監督はどう考えていたのか?
私がハリウッドに行くことはないと思うが、他人事とは思えない、とんでもない出来事だった。


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