2007年02月 アーカイブ
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作詞家の気持ち、脚本家の気持ち
川内康範先生が『おふくろさん』という歌の著作権の侵害を訴えられている。
何人もの法律家が、「著作権侵害にあたるかどうか微妙なところだ」とコメントしているけれど、私は作詞家、川内先生のお気持ちがよくわかる。
私が書いた脚本も、誰かによって演じられ、誰かによって演出されて世に出る訳で、誰かに曲をつけられ(近頃は曲先行の場合が多いらしいが)、誰かに歌われて、その作品が世に出る作詞家と立場は似ている。
あの曲がイントロの後、シンプルに「おふくろさんよ、おふくろさん」と歌い出すのと違って、その前に、自死した自分の母への想いを歌手が語ると、作品のニュアンスはまったく違うものになってしまうからだ。
役者もしばしばセリフを勝手に言い変えるが、今回の歌の前のセリフは、そんなレベルの問題ではないほど、大きな改変だと私は感じている。
川内先生と森進一さんとの間は、深い師弟関係があったとも聞くが、華やかな立場の人達は、しばしば昔の恩義を忘れるものだ。無名の頃、私が見い出した役者も、有名になれば、そんなことはまず忘れてしまう。もちろん誰が応援しようと、その役者や歌手自身に才能がなければ生き残れないし羽ばたけない。そういう意味で世に出た者は、皆選ばれし人達だ。私がスタッフの反対を押し切って推薦しなくても、いずれ世に出たであろう。そう思って、不義理な役者のことは許そうと、いつも自分に言い聞かせている。私もどこかで、そういう不義理をしていないとも言えないし・・・。
今回、森進一さんが、テレビで「『おふくろさん』は、もはや森進一の『おふくろさん』になっていますし・・・」というようなニュアンスのことを言っているのを先日聞いて、それは違うと思った。作詞する人がいて、作曲をする人がいて、編曲する人がいて、歌手ははじめて歌う曲を手にすることを忘れてはならない。
10年も前から何度もかわいがっていた歌手に、自作をいいよういにいじられて来た川内先生のお怒りはいかばかりであろうか。
「いいじゃないか、イントロくらい好きにやらせてやれば」とお思いの方に、ゼロから作品を立ち上げた作者の思いを知っていただけたらと思って、今回、この稿を書いて見た。
彼女の心意気
去年の6月、それは大河ドラマ『功名が辻』の「本能寺の変」の放送の前夜だった。赤坂のやき鶏や「なかいち」で友人と飲んでいたら、隣のテーブルに若い女の子達がいた。その子達はNHKの報道局でアルバイトしているそうで、その中の一人が、「私、ドラマ部で仕事したいんですけど、どうしていいかわからないんです」と言うではないか。
酔っていたせいもあって、私はかなり勢いよく、こう答えた。
「そんなの待っていたって誰も気づいてくれないわよ。明日、ドラマ部に行って直訴しなさい。とりあえず、大河ドラマのプロデューサーの○○さんを呼び出して、お願いしたらどう? 何なら私の名前を出してもいいわよ」
彼女は本当に翌日、ドラマ部で○○プロデューサーに直訴。○○プロデューサーも、彼女のガッツに胸打たれたのか、それからいろいろと相談に乗ってくれるようになり、ついに8ヵ月後、彼女はドラマ部で働けることになった。
名前も忘れていたが、私のホームページを見ていた彼女が、夫のイラストの個展の最終日にひょっこり来てくれて、たまたま会場に居た私と再会。彼女がドラマ部に雇われたことを知った。
リスクを背負うことを嫌い、捨て身で勝負に出ることをしない若者が多い中、彼女のような人がいることに感動した。
いい話でしょ?
救出
『功名が辻』のDVD、下記の書籍など、よろしくお願いしますね!
宮崎県沖で消息を絶ち転覆しているのが発見されたマグロ漁船の事故で、漂流していた船長と船員、カメラマンが救助された。
無事の知らせに思わず涙ぐむ漁業組合の人の姿と、体を支えられてヘリコピターから降りる救助された三人の姿に、私もグッと来てしまった。
いかなる状況でも生き残る人、手をつくしても助からない人・・・それを思うと、人には決められた寿命があるような気がしてならない。何もかも運命だと思ってしまうと、それはそれでやりきれないが・・・。
個展
『功名が辻』のDVD、よろしくお願いしますね!
ところで今日はプライベートなことのお知らせで恐縮ですが・・・。
2月7日~14日まで、夫が青山で個展を行います。
詳しくは、http://www.amedei.co.jp/EVENT/gallery.html でご覧下さい。
毎夜、ワンショットバーでお酒のボトルなどを描いていたのがきっかけで、私のエッセイ集『ねこの恋』が電子本になる時に、夫がイラストを描きました。それやこれやを展示しています。
近々青山においでになり、お時間のある方は、のぞいてみてやってください。